chocolate mint
目の前のこの姉(ひと)は、僕のそんな考え方が気に入らないらしい。
「あんた、奏一くんの披露宴出ないんだって?」
「うん。僕は『Felitita』のスタッフだからね」
「だったら結婚式の方のスタッフをやらせてもらって、そのまま二次会に来ればいいじゃない」
「その日は店のほうの遅番だから無理だよ。『Milkyway』のみんなには挨拶しとくから、奈緒子ちゃんと純くんには紫ちゃんからよろしく言っといてよ」
ギロリと睨まれたけど、こればっかりは譲れない。
奏一くんの結婚式で『Felitita』がケータリングをする事になった。
オーナーの和希さんと、チーフマネージャーの有紗さんが招待客として式に出席するから、必然的にマネージャーがどうしても足りなくなる。
「僕だとケータリングを仕切るのは力不足なんだよ。まだマネージャーとしての経験も少ないんだから」
それに、純くんと奈緒子ちゃんのしあわせを願いながらも二人が寄り添っている姿を見てしまったら……たぶん、僕はいつも通りの仕事だってこなせなくなるかもしれない。
そんな何もかも中途半端な自分が嫌になる。