chocolate mint
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「おい、裕介。お前、式に来ないんだって?」
「うん。だから、今日お祝い持って来たんだよ。これから暫く忙しくなるから、ここにも顔出せなくなるしね。僕の分まで紫ちゃんと和希さんと有紗さんがお祝いしてくれると思うから、よろしくね」
奏一くんの結婚式の一ヶ月前、僕は『Milkyway』へ顔を出していた。
式に出られないお詫びと、いつ渡せるか分からないお祝いを渡すためだ。
今日は珍しく、イートインのカウンターに奏一くんが出て来ていた。
「……あれ、志帆さんは?」
そしていつも明るい笑顔で迎えてくれる志帆さんが、何故か店に居なかった。
「今頃、奈緒と『Felitita』でメシ食ってるんじゃないか?」
店を休んで?奈緒子ちゃんと?そんなに二人が仲が良かったなんて知らなかった。
「ふーん。珍しい組み合わせだね。大丈夫?今頃修羅場になってるんじゃないの?」
何気なく言った言葉を「修羅場になんかなるわけないだろ」と、明るく笑って返された。
その笑顔はしあわせそのものといった感じで、心の奥底に押さえ込んでいたはずの黒い嫉妬の塊が、ドロリと少しだけ溢れ出しそうになった。
志帆さんと奈緒子ちゃんに問題が起こるはずがない。
奈緒子ちゃんの気持ちはもう、奏一くんじゃなくて純くんに向かっているからと暗に言われているようで。