chocolate mint

「裕介」


「何?奏一くん」


「お前どうした?何か酷く疲れた顔してる」


「……まぁ、今の時期は忙しいからね」


言葉を濁してごまかした僕に、奏一くんは眉を寄せた。


「裕介が疲れた顔してるなんて珍しいね。どんなに忙しくったって、爽やか王子なのに」


陽介さんまで、そんな事を言ってくるから、少しだけ強い口調で話を切ってしまった。


「陽介さん、『王子』って言うの止めて」


まさにその『王子』という言葉が今の僕の悩みの種だったから、陽介さんが心配してくれているのが分かっていても、思わず険しい顔になってしまっていた。


あれも……ストーカーって言うのかな。


ここ二、三ヶ月、僕は一人の常連客に悩まされていた。


最初はランチの時間にたまに来る程度だったそのお客様が、今では毎日のように顔を出す。


それだけだったら『良いお客様』の範疇に収まってくれているから問題は無いのだけど、最近他のお客様を牽制するような行動を取ったり、僕が仕事を終わった所でばったり会って、待ち伏せされてるかも……なんて思う事があったりして。


客のあしらいには自信のあった僕も、さすがに参っていた。


……大体25歳の男を捕まえて、『王子』って何だよ。
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