chocolate mint
はぁ、と思わず深いため息を吐くと、目の前にコトッとカフェラテが置かれた。
「え?陽介さん、僕頼んでないよ?」
「いいよ。これは、俺からのサービス。いっつもキラキラしてると疲れるでしょ。たまにはね、息抜きしなよ。……悩みはなかなか吐き出せない性格だろうからね」
心の奥を覗かれたような感覚に、身体が少しだけゾクリと震えた。
どうやら自分で思っているよりも、僕は弱って見えるらしい。
……香織ちゃんに会いたいなぁ。
香織ちゃんの笑顔は、僕の唯一の癒しだから。
彼女の笑顔を思い出しなからカフェラテに目を向ける。表面にはラテアートが描かれていた。
「これって、何だっけ?」
確か名前があったはずだけど。
「ん?チューリップだよ。和むでしょ?今の裕介に必要なんじゃないかと思ってね」
和みが必要?何だそれ。
思わず陽介さんの顔をまじまじと見てしまった。
ニコニコとこっちを見ている顔立ちは志帆さんと似ていて、やっぱり兄妹だなぁと思う。
ただ銀縁の眼鏡から覗くその瞳は、時々何を考えているんだろう?と思うくらい何も映していない時がある。
「……ありがとうございます」
カップの中のチューリップの花弁は、ハートの形をしていた。
ぐるり、とスプーンでかき混ぜると、すぐにハートは歪んで溶けて無くなってしまった。