chocolate mint

はぁ、と思わず深いため息を吐くと、目の前にコトッとカフェラテが置かれた。


「え?陽介さん、僕頼んでないよ?」


「いいよ。これは、俺からのサービス。いっつもキラキラしてると疲れるでしょ。たまにはね、息抜きしなよ。……悩みはなかなか吐き出せない性格だろうからね」


心の奥を覗かれたような感覚に、身体が少しだけゾクリと震えた。


どうやら自分で思っているよりも、僕は弱って見えるらしい。


……香織ちゃんに会いたいなぁ。


香織ちゃんの笑顔は、僕の唯一の癒しだから。


彼女の笑顔を思い出しなからカフェラテに目を向ける。表面にはラテアートが描かれていた。


「これって、何だっけ?」

確か名前があったはずだけど。


「ん?チューリップだよ。和むでしょ?今の裕介に必要なんじゃないかと思ってね」


和みが必要?何だそれ。


思わず陽介さんの顔をまじまじと見てしまった。


ニコニコとこっちを見ている顔立ちは志帆さんと似ていて、やっぱり兄妹だなぁと思う。


ただ銀縁の眼鏡から覗くその瞳は、時々何を考えているんだろう?と思うくらい何も映していない時がある。


「……ありがとうございます」


カップの中のチューリップの花弁は、ハートの形をしていた。

ぐるり、とスプーンでかき混ぜると、すぐにハートは歪んで溶けて無くなってしまった。
< 32 / 175 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop