chocolate mint
「わぁ!びっくりした。ちょっと、そんなに急がなくても怒んないわよ?私だって遅れたんだし……って、どうしたの?顔色悪いけど」
……車にいるのは、やっぱり紫ちゃんじゃない。
最悪の予想が現実になった。
目の前で怪訝な表情をしている紫ちゃんに事情を説明する。
「とりあえず、タクシー呼ぶから。送って行けなくて悪いけど」
鞄からスマホを取り出そうと顔を下に向けると、額にバチン!とデコピンが飛んできた。
「痛っ!……何すんの」
「タクシーなんか呼ばなくていい!あんたの事置いて行ける訳ないでしょ!約束なんてまたいつでも出来るんだから。……だから、あんたも約束してるんなら、早いうちにLINE入れときなさい」
紫ちゃんの言いたい事はすぐに分かった。
たぶん……今の状況を考えたら、香織ちゃんとの約束には絶対に間に合わない。
断りの電話を入れている紫ちゃんの横で、僕は香織ちゃんに『急な用事が入って行けなくなりました。ごめんなさい』とLINEを入れた。