chocolate mint
……恋がうまくいかないのに、仕事の方はどんどん順調になっていくなんて皮肉なもんだな。
香織ちゃんに彼氏が出来てから、僕はそれまでの気持ちを吹っ切るように仕事に打ち込んだ。
和希さんの言う通りに、最近じゃ仕事で新しく覚える事も無くなっていて、モチベーションを維持するのに苦労していた。
その矢先の独立話に喜ばしい気持ちは当然あったし、新たな目標が出来た事に内心ほっとしていた。
気がついたら、香織ちゃんが菊井と付き合ってからもう二年近くが経っていて、香織ちゃんの周りの人達からちらほらと彼女が結婚をするかもしれない、なんて話を聞いたりして……
確かにこのまま行くと二人は結婚するんだろうな、なんてだんだんと諦めの気持ちの方が大きくなっていた。
菊井はちょっとだけ嫉妬深くて、彼女を束縛するようなヤツだと紫ちゃんは言っていた。
だからかもしれないけど、僕達のマンションに香織ちゃんが遊びに来る以外は、たまに『紫山』で紫ちゃんと飲んでいても、僕が呼ばれる事は無くなっていた。
もうそろそろ……この恋は諦め時かもしれないな。
香織ちゃんが結婚したとしても、しあわせなその姿を友達としてなら喜ぶことがきっと出来るはずだ。
そんな風に呟いて、無理やり心を納得させていた。
ずっと真っ黒な嫉妬の塊が、澱のように心の底に溜まり続けている。その事実に気がつかないふりをしたままで。