chocolate mint

ーー6月のある日、そんな僕の恋は思いもよらない展開から突然動き出す事になる。



***

始まりは、金曜日の22時半。


遅番+ラストの勤務を終えてクタクタになって帰宅した僕にかかって来た迷惑な電話からだった。


「裕介、迎えに来て。『紫山』にいるから」


……はぁ?何言ってるの?


身体は泥のように疲れて思考力だって鈍っていたから、声に出さなかったのは奇跡だと思う。


口に出していたら、もちろん顔を合わせた瞬間にソッコーで殴られる。


28歳にもなって……しかも駅前商店街の中の居酒屋っていう家から歩いて10分ほどの距離でも迎えに来いと言う我が儘な姉に、無駄な抵抗だと分かっていても言葉を返す。


「紫ちゃん……僕今帰って来たばっかりだし、忙しかったから疲れてるし、眠いんだよ。『紫山』だったら車出せないでしょ?僕が迎えに行く意味ある?歩いて帰って来たほうが早いって。……今日は亘さんと一緒じゃないの?」


『紫山』のある商店街は、アーケード街だから車は入って行けない。


紫ちゃんが飲み過ぎて歩けない、なんてそんな女子みたいな事は絶対にあり得ないから、頼むから歩いて帰って来て欲しい。

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