chocolate mint


***

「あれっ?ゆうすけくん?ゆーすけくんだ!」

『紫山』の個室の格子戸を開けると、そこにいるはずの無い女(ひと)がいて、思わず固まってしまった。


「……香織ちゃん、久しぶり」


何とか笑顔を顔に貼り付ける事には成功したけど、心臓はバクバクと音を立てている。


「お迎えご苦労。ま、座りなさいよ」


目の前には、そんな僕の動揺に気がついてニヤニヤと笑っている悪魔がいた。


「……香織ちゃん、何かあったんでしょ?」


そんな悪魔の顔も気にならないくらい、弱っている香織ちゃんが気になった。顔だけは笑っているくせに、今にも泣き出しそうなほど潤んだ目をしている。


僕は香織ちゃんに話をして欲しかったんだけど、代わりに悪魔が何もかも全部丁寧に説明してくれた。


菊井と別れた?……ってか、同窓会で振られた?


わざわざ呼ばれて、プロポーズを見せつけられて?


……何だよ、それ!
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