chocolate mint
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「あれっ?ゆうすけくん?ゆーすけくんだ!」
『紫山』の個室の格子戸を開けると、そこにいるはずの無い女(ひと)がいて、思わず固まってしまった。
「……香織ちゃん、久しぶり」
何とか笑顔を顔に貼り付ける事には成功したけど、心臓はバクバクと音を立てている。
「お迎えご苦労。ま、座りなさいよ」
目の前には、そんな僕の動揺に気がついてニヤニヤと笑っている悪魔がいた。
「……香織ちゃん、何かあったんでしょ?」
そんな悪魔の顔も気にならないくらい、弱っている香織ちゃんが気になった。顔だけは笑っているくせに、今にも泣き出しそうなほど潤んだ目をしている。
僕は香織ちゃんに話をして欲しかったんだけど、代わりに悪魔が何もかも全部丁寧に説明してくれた。
菊井と別れた?……ってか、同窓会で振られた?
わざわざ呼ばれて、プロポーズを見せつけられて?
……何だよ、それ!