chocolate mint
「ねぇ……ゆーすけくん……わたしの何がいけなかったのかなぁ……」
怒りで真っ白になりかけた頭に、香織ちゃんの弱々しい声が響いた。
そうだ。僕が怒ってる場合じゃない。こんな酷い事をされてるのに、まだ自分が悪いと思ってる香織ちゃんに声をかけてあげないと。
……それにしても、酷い男(ヤツ)だよな。ただ別れたいだけだったら、わざわざ目の前でプロポーズなんかしなきゃいいのに。
バカ男を大声で罵りたい気持ちをグッと押さえて、あえてのんびりとした口調で僕は香織ちゃんに話かけた。
この場には、僕が怒らなくてもちゃんと代わりに怒ってくれる人がいるから。
だから、怒りのままで話すこの人がついついやりすぎて香織ちゃんが凹み過ぎないようにと、フォローする為に呼ばれたんだろうって、この時点で僕は大体察しがついていた。
「プロポーズを見るまで気がつかないなんて、香織は鈍感過ぎる!」
予想通り香織ちゃんが落ち込んでいるのも構わずに、悪魔は言葉の出刃包丁で容赦なくどんどん斬りつけていった。
「ほんと、香織は見かけ倒しなんだから!」
「本音をちゃんと伝えておかないから、どんな扱いしても文句を言わない女だって思われちゃうんだからね!」
ズタズタにされながらも辛い気持ちを吐き出してスッキリしたのか、帰り際には香織ちゃんは笑顔になっていた。