chocolate mint
そんな崎山先輩に対する印象が変わったのは、僕が高校2年生の時だった。
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「おーい裕介、頑張ってるか?」
3年生が引退して、新チームになった秋。
そろそろ受験勉強に励まないといけないはずのこの人が、なぜかちょくちょく顔を出す。
「……頑張ってるよ。何なの?暇なの?純くんは」
「何だよ、お前、冷たいなー。暇じゃねぇよ。図書室寄ったついでだっつの。彼女と一緒に図書室通いつめてんのに、後輩の所にも顔出さない元キャプテンよりも、よっぽど優しい先輩だろうが」
「それが正しい受験生の姿だと思うけど」
昔から面倒見のいい純くんの事は好きだったけど、この当時はちょっとだけ鬱陶しかった。
「ま、いいや。ちょっと先生に挨拶して来るわ」
そう言って純くんは先生の所へ行って、そのままみんなの輪の中に混ざってしまった。
こうなってしまうと、自分が途端にあの輪の中には必要が無い存在なんじゃないかって、そんな後ろ向きな事を考えてしまう。
『10分休憩』
ちらり、とこっちを見たマネージャーに口の動きだけでそう告げると、逃げるように体育館を飛び出した。