chocolate mint

紫ちゃんの瞳がゆっくりと僕の瞳を捉える。


いつもはアーモンド型の瞳が少しだけ切れ長に見えるのは、それだけ真剣に話をしているからだ。


こうしてじっと見つめられると、嫌でも自分の心とちゃんと向き合わなくてはいけないような、そんな気持ちに駆られていく。


まるで鏡を見ているようにそっくりな瞳だから、余計にそう思うのかもしれない。



「……今日は呼んでくれてありがとう。僕には……もう二度と香織ちゃんに近づくチャンスなんて無いと思ってた」


それだけ言えば紫ちゃんには伝わるはずだ。


紫ちゃんに『紫山』に呼び出されたのは、かなり久しぶりだった。


亘さんと付き合い始めたから僕は必要無くなったんだと思ってたんだけど、どうやらそれだけじゃなかったらしい。


思えば前にちょくちょく呼び出されていた時には、いつも紫ちゃんの隣には香織ちゃんがいた。


あれは、この人なりに僕に気を遣ってチャンスをくれていたのかもしれない。


ただの我が儘で、自分勝手で、乱暴で、血も涙もない悪魔じゃ無かったんだな……。
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