chocolate mint
「いい?裕介。あと、あんたにもう一回だけ私からチャンスをあげる。それでどうにもなんなかったら、香織とは縁が無かったって思って諦めてもいいんじゃないかな」
軽い口調に『何を偉そうに』、と同じように軽口で返そうと向き直った瞬間、真剣な瞳に射貫かれて思わず言葉を飲み込んだ。
「……あんたはヘタレだし、そこは頑張んなきゃいけないでしょって所で何回もバカみたいにタイミングを外したのもいっぱい見てきたけど……二年前の事だけは、私が待ち合わせに間に合ってたらあんな事にはならなかったんだろうなって……ずっと申し訳ないなって思ってた」
「あんたさ、あの日に香織に大事な話をしようとしてたんじゃないの?あれからの落ち込みようが酷かったから、気になってたのよ」
「……私だってね、もうあんな死んだような顔して仕事ばっかしてるあんたは見たくないんだから。……だから、ちゃんと自分の気持ちにケリを付けなさいよ」
「……紫ちゃん」
「辛気臭いのよ!一緒に住んでるんだから、私まで暗い気持ちになるでしょうが!!」
照れ隠し……にしては度が過ぎるくらいの力で、また微妙な場所に肘打ちをくらったけど、僕は久しぶりの感情に身体が熱くなっていくのを感じていた。
ーーこの恋を、想いを、まだ諦めなくていいんだ。
その事が、たまらなく嬉しかった。