chocolate mint
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「……もう限界」
「…………何であの人、あんなに無防備なんだ」
香織ちゃんを『紫山』からアパートに送った帰り、元カレのバカ……じゃなくて、菊井が合鍵を使って部屋に入っていた形跡を発見した。
しかも、自分の私物を取りに来ただけなら合鍵はもう必要無いはずなのに、ポストに鍵は無く、おまけに何故か香織ちゃんが大切にしていた大好きなバンドのアルバムが全て持って行かれてた。
金目の物には手を付けてなかったみたいだけど……ここまでしたら泥棒と一緒だろ。しかも鍵もかけないで出ていったとか、ほんと最悪なバカ男だ。
長く付き合っていて結婚も考えていた男の裏切りに、香織ちゃんは顔には出さないようにしていたけど、かなりショックを受けていたみたいだった。
まぁ素性も割れてるし、向こうも『先生』なんだから、これ以上の事はしないとは思うんだけど……
だけど相手はバカだから、やっぱり何を仕出かすか分からない。そう思った僕は多少強引だったけど香織ちゃんを自分のマンションへと連れ帰った。
バカが部屋に居なかったって事だけで安心した様子の香織ちゃんは、まだバカが合鍵を持っているのがどんなに危険なのかって事を絶対に分かって無かったから。
……頭はいいくせに、そういうちょっとした所が抜けてるんだよな。香織ちゃんは。