chocolate mint
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「あはは、お気の毒。でもさ、香織スタイル良いから、いい目の保養じゃない」
「目の毒だって……」
「嬉しいくせに」
「…………まあね」
確かに、嬉しい気持ちは無い訳でも無い。
気を許している人以外には、香織ちゃんは絶対にこんな無防備な姿をさらさないはずだから。
今だって帰って来るなり僕と紫ちゃんを部屋から引っ張り出して、ビールやらワインやら色々リビングのテーブルに並べて飲みつつ、『お金が無いから引っ越せない』『何で亨のせいで私が引っ越さなきゃいけないの?!』とか散々愚痴って、最後には『もうこんな風に裏切られるのは嫌だ』『もう誰とも付き合えない』って涙目で話しながら……
いつものように僕に寄りかかって来て、僕の膝を枕にして眠ってしまった。
きっと目が覚めたら今言った話の半分も覚えてないだろうし、話の途中で眠ってしまった事すら分かっていないはずだろうけど。
これで自分はお酒に強いって思ってるんだから、ほんと可愛い……いやいや、ほんと呆れてしまう。
「だけどさ、香織お酒に弱いけど、こんな風に眠っちゃうのってあんたといる時だけだよ。あたしと二人きりの時はせいぜいテーブルに突っ伏しちゃうくらいだもの」
「……こんな事、誰にでもされたらそれこそ困るよ」
特別に気を許してくれているからか、そもそも男として見られてないからか。
……それとも、寝心地の良い枕程度にしか思われていないのか。
男として見られていないのはまだしも、せめて人間としては意識してもらいたいと切に思う。