chocolate mint

合鍵を置いて行かなかったし、香織ちゃんが大切にしていた物まで持って行った。


香織ちゃんが『返して!』って連絡をするだろうって期待しての行動だろう。


今は裏切られた事がショックだろうから気がついていないだろうけど、香織ちゃんの心の中には、あの男への情がまだたっぷりと残っているに違いない。


そんな時に、もし『浮気は気の迷いだった』なんて言われて土下座の一つでもされたら……優しくて押しに弱い香織ちゃんは絶対にヨリを戻しちゃうだろうから。



そんなチャンスはくれてやらない。


今は僕のターンだ。絶対誰にも邪魔はさせない。


香織ちゃん自身にも。


まだアイツに対して情だけじゃなくて愛情が残っていたとしても。



……あと、絶対にあのベッドは捨ててやる!


あの日、初めて香織ちゃんの部屋に入った時に、所々にあのバカ男の存在を感じて、吐きそうなほど気分が悪かった。


腹いせに、と言うか八つ当たりに近い気持ちで、大事にクローゼットに掛けてあった香織ちゃんの趣味じゃないワンピースを捨てさせてからここへ連れてきた。


あの男の気配を感じるものは、髪の毛一本ですら、ここに入れたくはない。


同窓会に出席してから、香織ちゃんがずっとソファーで寝てたっていうのも……結局ベッドに近づくだけで思い出してしまうほど……ヤツと……

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