chocolate mint
「『カオリ』ちゃんに伝わるといいわね」
それ以上何をする訳でも無く、身体を離して意味深にフフッと笑う有紗さんの目的が分からなくて、心の中で首を傾げた。
「……別に、何の手伝いもいりませんよ。僕は大丈夫ですし、絶対に適当な仕事もしませんから」
僕はあなたとは違う。
そんな気持ちも込めて話を切り上げた。
『同棲』じゃなくて、『同居』か。
きっと『Milkyway』で、紫ちゃんがからかって『同棲』って言ったのを、香織ちゃんが物凄い勢いで『同居』だって否定したんだろうな。
偶然店内にいた有紗さんにも……聞こえちゃうくらいの大きな声で。
ーードロリ、とまた心の底で黒い感情が溢れ出す感覚がした。
今まで、この感情は、簡単に彼女へ近づく男達への嫉妬だと思っていた。
だけど、香織ちゃんと一緒に暮らして、物理的に彼女に一番近い立場の男になった今、それが違う感情だったんだと気がついてしまった。
……鈍感な香織ちゃんに呆れている?
……こうなっても男として意識してもらえず、友達という枠から抜け出せない情けない自分への苛立ち?
どっちも合っているようで、何だか違う、と思う。