chocolate mint
「ううん。私は図書室からの帰りでここを通っただけなんだけど。先輩『も』って……誰か体育館にいるの?」
しまった。
失敗したなぁと思っても、もう遅い。
「純くんが来てるから、崎山先輩も約束してたんじゃないかと思って」
正直に言うと、先輩はちょっとだけ目を泳がせた後で意外な言葉を言った。
「裕介くんは、優しいね」
「……はぁ?」
何言ってんの?って顔をしてしまったと思う。
そんな失礼な態度も気にする事なく、先輩は話を続けた。
「純くんも、ほんとしょうがない人だね。もう次のチームになってるから今顔を出しちゃったら裕介くんの立場が無いのに。何の為にこっちが小山くんと話したのか……ほんと、意味が無いなぁ。後輩に気を遣わせちゃうなんてね」
ただあの場に居づらくなって逃げてきただけなのに、優しいと、気を遣える後輩だと言われて、何とも言えない複雑な気持ちになる。
それと同時に、崎山先輩も奏一くんも二人ともちゃんと僕たちの事を考えてくれていたのだという事に、やっと今気がついた。