chocolate mint

口元だけは機嫌良くニコニコと笑っているくせに、目は今にも泣き出しそうなほど悲しげに揺れているから。


きっと、香織ちゃん自身は気がついていないんだろうな。


意地っ張りだから。辛い事ほど表には出さないようにして。


そんな事を繰り返してきたら、心は麻痺して、どんどん鈍感になっていくだけなのに。


同じように自分の感情を押し殺して、表面上だけは笑顔を見せてきた僕だから、香織ちゃんの今の気持ちが手に取るように分かるんだ。



「……香織ちゃん、何かあったでしょ」



部屋に戻ろうとしていた香織ちゃんを引き戻して、そう聞いてみた。


何も無いって言っても、ダメだよ。今日は甘やかしてあげない。


「潰れるくらい飲んじゃうのも、何か嫌な事があった時だけ。もっとはっきり言っちゃうと、振られたり、男関係で何かあった時だけなんだよ」


「隠すのも下手だから、誤魔化しても無駄だからね。……だってさ、今の自分の目を鏡で見てみなよ。香織ちゃん、さっきからずっと泣きそうな目になってるんだよ?」


そこまで丁寧に教えてあげたのに、まだ意地を張って「なきそうになんて……なってないよ」と言うその瞳からは、今にも涙が溢れ落ちそうで。

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