chocolate mint
堪らない気持ちになって、気がついた時には、思わず後ろからギュッと身体を包み込むように抱き締めてしまっていた。
「ゆ、ゆ、ゆ、裕介くん!?」
焦った声を出して振り向こうとする香織ちゃんに、「はい、こっち向くのは駄目ー。ちょっとでも可愛い顔見せたら、このまま襲っちゃうよ」と釘を刺す。
口調は冗談のように軽くしたけど、本気だって気がついたみたいで、ピタリと動きが止まった。
ドクン、ドクンと心臓が痛いくらいに鳴っている。
その鼓動が、動揺が伝わってしまわないように、僕はそっと息を吸って、ゆっくりと吐き出した。
「裕介くん……」
「……寂しいよ」
ようやく鼓動が落ち着いた頃、香織ちゃんがぽつりぽつりと本音を吐き出し始めた。
「紫がしあわせになって、友達としてほんとうに嬉しいの」
「それだけは、ほんとうなの」
「……でも寂しい。寂しいの。どうしようもないくらいに」
『寂しい』と言いながらも、隠していた感情を表に出すことができたせいか、その声はどこかほっとしたような響きを感じさせた。