chocolate mint

「放り出してないよ。事情はさっき説明したよね?それにさ、僕、今日は仕事休みだよ」


……本当は、休みを『取って』『Milkyway(ここ)』に来てるんだけどね。


都合の悪い情報は伏せて、心の中でペロリと舌を出す。


「無理やり休んだんじゃないのか?……全く。崎山も大人なんだから別れ話くらいちゃんとできるだろ。お前がこんな風にストーカーみたいに、こそこそ隠れて見守らなくてもさ。しかも、何で俺まで隠れないといけないんだよ」


そう言いながら、もう一人呆れ顔の男が近づいて来て、志帆さんの隣に並んで腰かけた。


「だから、それもさっき説明したでしょ。あとさ、僕の事を『ストーカー』って呼ぶのだけは、止めてね。……あっ、志帆さん子どもできたんだよね。おめでとう奏一くん」


心からの笑顔を見せて祝福したはずなのに、目の前の二人は顔を見合わせると、なぜか同じタイミングで深いため息を吐いた。


……そんな顔をしなくたって、僕だってちょっと過保護過ぎると言うか、心配し過ぎと言うか、むしろそんなのは通り越して気持ち悪がられそうなくらい、異常な行動だってのは充分分かってるよ。


だけど、菊井と香織ちゃんが二人で会う事に、何となく嫌な予感がするんだから仕方ない。


端から見たら香織ちゃんは浮気されてフラれて完全に別れているはずなのに、フッた菊井(アイツ)のほうがまるで香織ちゃんに未練があるような、妙な行動をしているし。

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