chocolate mint
何だか崩してしまうのが勿体なくて、スプーンを使わず、そのままそっと口に運んだ。
「そろそろこっちに入れ。見つかったら意味無いんだろう?ほら、奏一も」
陽介さんに促されて、カップを持ったままで厨房の方へと戻った。
カウンターの奥の4人掛けのテーブル席は、厨房にいると、座っている人達の会話が聞こえてしまう。
前に陽介さんに「この席、会話が筒抜けだよ」ってそれとなく伝えたけど、「大丈夫だよ。俺達がここに近づかなきゃいいだけだから」と、テーブルの裏側の壁に行くなと言われただけで軽く流されてしまった。
まさか、こんな形でお客さん(香織ちゃんと菊井)の会話に聞き耳を立てる事になるなんて……
「じゃあ、香織ちゃんがこっそり会話できるような席は無い?って聞いてきたらここに私が案内すればいいのね。……でも、もし男のほうが先に来ちゃったらどうすればいいの?」
そんな事は絶対無いし、香織ちゃんは真面目だから『Milkyway』での待ち合わせは嫌だなって思っていても、相手から指定された場所なら変えないし(奏一くんが居たら、どうにかして変えようとするはずだけど)、先に来て待っているだろうと思う。
そう伝えたら、志帆さんに「ほんっと、裕介って香織ちゃんのこと『大好き』なのねー」と笑われてしまった。