chocolate mint
時間にルーズなヤツだっていう印象は無い。そもそも、そんなヤツとは二年も付き合っていないはずなし。
それとも、話し合いをしたり、曖昧なままの別れ話を済ます以外の何か別の目的でもあるんだろうか。
「ーー亨」
香織ちゃんの呼び掛ける声が聞こえて、カウンターの後ろ側の窓から入り口の方向を見る。
色白で、ひょろっとした身体。
スクエア型のメタルフレームの眼鏡の奥から見える垂れ目がちの二重の瞳。
あぁ……間違いない。ヤツだ。
彼女を束縛するようなタイプの男だと聞いた後で、偶然二人の姿を見かけた時(決して付け回した訳じゃない)、その神経質そうな視線に嫌悪感を抱いた事を思い出した。
……香織ちゃんは、まだこの男に未練があるんだろうか。
『亨』とヤツの名前を呼ぶその声が、自分が想像していたよりも優しげだった。
今聞こえてくる二人の会話だって、刺々しい雰囲気は全く無くて、まるでまだ二人は付き合っているんじゃないのかって思ってしまうくらい、自然な雰囲気が滲み出ていた。