chocolate mint
僕がどんな思いで『Milkyway』にいたのかも、今どれだけ緊張しながらこの手を繋いでいるのかも、香織ちゃんには何一つ伝わっていないんだ。
……想像もしたくないけど……たぶん今、香織ちゃんの頭の中は菊井(アイツ)の事でいっぱいなんだろう。
僕もそんな事を考えながら歩いていたから、香織ちゃんに玄関で一旦ストップさせるのを忘れて、さっさと先に上がってしまっていた。
「……あっ。香織ちゃん、香織ちゃん!ストップ!!」
「……えっ?あっ!わっ!」
パンプスを履いたままで玄関に上がろうとしていた香織ちゃんを慌てて止めたけど、間に合わなかった。
急に止まった身体は、前のめりになったまま僕の方に倒れてきて、胸元にポスンと綺麗に収まった。
真正面から受け止めた身体は、柔らかくて温かくて、そのまま心ごと蕩けてしまいそうなほどに心地良い。