星降る空で抱きしめて【下】~女子校英語教師と生徒の恋の場合
その夜。

お風呂上がりに何か飲もうとリビングに入ると、兄がソファにどっかり腰掛けてテレビを見ていた。

キッチンで冷たい麦茶をグラスに注ぎ、兄の隣に座る。



テレビではチキンやジュエリーのクリスマスに向けたCMが流れている。

それらをぼんやり眺めながら何気なく兄に話しかけた。



「お兄ちゃん24日デートなの?」

「いや、俺は25。碧ちゃん24日バイトなんだよ。」

「ふぅん。」



テレビにケーキのCMが映る。

つやつやの苺が鮮やかなショートケーキが見るからに美味しそうに画面を彩る。



「俺やっぱケーキは生クリームたっぷりの苺のヤツが一番好き。」

「…子供っぽい。」

「何言ってんだよ!大人ほど王道の良さが分かんだよ!!

大体俺もう20歳だし!成人してるし!!」

「大変な大人がいたもんだね。」

「酒も飲めなきゃ11時以降出歩けない未成年に言われたくない。」



(ん?)



11時以降出歩けない未成年者─

兄の言葉に私の頭にふとある考えが思い浮かぶ。



「ねぇ、お兄ちゃん。ていうことは24日、ヒマ?」

「ん?あぁ。」

「私ね、まだ誕生日プレゼントもらってないんだけど。」

「うん?」

「大好きなオ・ト・ナのお兄様にお願いがあるのっ♡」

「え…」



私は先生にしか見せないような満面の笑みを、怪訝そうに顔を引き攣らせた兄に向けた。

     *  *  *
< 35 / 62 >

この作品をシェア

pagetop