嵐の夜は【短編】


それは風邪をひくだろう。いくらなんでも。カバンの中から、ハンカチを取り出して手渡した。

「とりあえず使ってください。ボロボロですよ」

「まいったな…ありがとうございます」

「タクシーとか使わないの?」

「ここから1時間半なんで、流石に」



彼の手に触れた時、案の定冷たかった。渡した時、少しだけ震えていた。


この人は明日の朝までこの寒くて冷たい中、電車が動くのを待つのだろうか。

私の家は駅を抜けて徒歩2分もしない場所にある。男物の着替えは元カレが着ていた服がある。

言葉にするには勇気がいった。



「私の部屋、おいで。なにかの縁だし」
< 2 / 9 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop