嵐の夜は【短編】
それは風邪をひくだろう。いくらなんでも。カバンの中から、ハンカチを取り出して手渡した。
「とりあえず使ってください。ボロボロですよ」
「まいったな…ありがとうございます」
「タクシーとか使わないの?」
「ここから1時間半なんで、流石に」
彼の手に触れた時、案の定冷たかった。渡した時、少しだけ震えていた。
この人は明日の朝までこの寒くて冷たい中、電車が動くのを待つのだろうか。
私の家は駅を抜けて徒歩2分もしない場所にある。男物の着替えは元カレが着ていた服がある。
言葉にするには勇気がいった。
「私の部屋、おいで。なにかの縁だし」