嵐の夜は【短編】

初めて見た時から綺麗な人だと思った。背筋が伸びてて、立ち姿が綺麗だなと。きっと、年は5、6歳は上であろう。落ち着いた雰囲気は俺の年の人では出せない。

就職の面接を終えた時から雲行きが怪しい、早く帰らなければと思った時には遅かったようだ。一気にどしゃぶりの雨、そして強い風が俺の傘を奪った。

そのため、彼女の傘に相合傘をすることになった時。彼女のシャツが身体に貼り付いているのを見て、思わず生唾を飲み込んだ。

妙齢の女性の、濡れた身体。パワーワードが頭にガンガン響く中「ここのパン屋美味しいのよ、高いけど」とかいう彼女の言葉に曖昧に頷くしかできなかった。

とりあえず煩悩を捨てて、シャワーを浴びよう。

…頭を冷やそう。
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