嵐の夜は【短編】


私のココアの作り方は人と少し違う。インスタントコーヒーとのブランドにすることでコクのあるココアになる。ミルクの柔らかい匂い、インスタントコーヒーの深く苦さがヒリヒリするような匂い、甘いカカオの香り。どれも好きだ。

テレビをつけるとやはり天気予報は明日の未明まで、大雨で暴風警報区域に入っている。電車の運行は完全に停止している。判断は間違ってなかった。

「お風呂ありがとうございました。お風呂だけじゃなく…いろいろ」

頭を下げてリビングに入ってきた。ホカホカと湯気が立っている。少しホッとした。

「いいよ。気にしないで、あ、ホットココアいる?」

「はい、いただきます」

向かい合うように座る。

「あ、美味しい」

「でしょ、オリジナルブレンドだからね」

「作り方教えてくださいよ」

「えっとね…」

それが皮切り。
彼の名前、厳島 嵐。
彼の年齢22歳。
就職活動でここにきたこと。
お気に入りの傘が風で大破したこと。
スーツもネクタイもおろしたてだったこと。

まるでクラスメイトのような親しさで。異性と壁隔てなく話せたのはいつぶりだろうかと振り返っても記憶になかった。新鮮でタイムスリップしたような。
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