嵐の夜は【短編】
息をするだけの会話ばかりしていた私にとって、嵐くんとの会話は瑞々しかった。

寝る時は流石に揉めたが、私が折れた。「男なので。わかりますよね」と真顔で念押しされたら仕方ないし、怖気付くしかなかった。

私は自室、彼はリビングのソファーで。

嵐の夜を共に過ごした。









あの日から数えて21日目の今日。


また雨が降った。今回の雨は小雨。気温は低くなっているから、冷たさが容赦ない雨だった。


あの日、私は彼と同じ22歳のように、キラキラしていた。

その宝箱に詰めておきたい記憶は少しずつ酸化している。


それが悲しくて、駅でふと立ち止まった。
< 7 / 9 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop