クールな部長は溺愛同居人!?
味のないホールケーキ

「いってきまーす!」

寒空の下
元気に手を振り
車に乗り込むお母さん。

「適当におせち作って食べてね」

適当に……雑っ!
それほど浮かれて喜ぶお母さん。
楽しんで来て下さい。

「幸弘君ごめんね。行ってくるから」

「悪いね幸弘君。留守を頼むね」

お母さんとお父さんは私じゃなくて、課長に留守をお願いしてる。実の娘は私ですけど。

「楽しんで来て下さい」

玄関先で課長とお見送り。
これから両親は2週間の豪華客船旅行。お父さんの運転で集合場所に出発。

笑顔で出発する2人を見送った後
急に訪れる静寂。

冷たい冬の風が、私と課長の間に流れる。

「新堂とお泊りクリスマスだろ。何時に出る?」
サラッと言われてその顔を見る。
手を伸ばし
課長のはねた髪を直したいけど
触れる資格がない気がして顔をそむけた。

「5時に迎えに来ます。幸弘さんは?お見合い相手とデートですか?」

「うん。もう出る」

「楽しんで来て下さい」

「未亜もな」

課長はクルリと背を向けて
先に家に入ってしまった。

はねた髪で行ってしまえ!
心の中で舌を出す私だった。


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