クールな部長は溺愛同居人!?
「そして今年になって僕に『運命ってあると思うか?』って、乙女な事を聞くんだよ。あの相楽が」
思い出したように係長は笑い
話を続けた。
「飲み会の帰りかな、珍しくあいつはテンション高めで、そんな事を聞くんだよ。だから『あるんじゃない?』って答えたら『うん』って一言だけ返事して、満足そうにうなずいてた。最高に気になって、つぶれるくらい飲ませて追及すると『ひとめぼれした女の子が同じ会社に入った』って口を滑らせた。お兄さんから聞いた話とか……言ってたかな……違ったらごめん」
違わないかも
お義兄さんに内定が取れた時に話をしたから。
言わなくていいって言ったのに
課長に言ったんだね。
「次の日になってまた聞いたけど無視された。しばらくして相楽が人事とやりあった話を聞いてピンときた。運命の女の子をセクハラな場所から守ったんだなって思った」
やっぱり
私を守ってくれたのか。
味のない水が苦く口の中で広がる。
「ついでに言えば、あいつのマンションで火事騒ぎがあった時、僕にまた『運命ってやっぱりあるよな』って、少年のようなキラキラした顔で言うんだよ。新井さんに見せたかったなあの顔は笑えた。その頃に何かあった?」
うちに引っ越して来た頃だ。
課長の気持ちが伝わって
胸が苦しくなった。
「仕事も順調で大切な女の子が傍にいる。そんな相楽に嫉妬した。ごめん」
いつも見ることがない
寂しげな表情。