完璧幼馴染の仮面が崩れるとき



そう思いながら、誰もいない更衣室に入る。



「……なんで。」



1人で着替えてると、今頃になって連絡しておけばよかったなんて、後悔してしまう。



言いたいこと、沢山あったのに…。
感謝も文句も、これからしたいことだっていっぱい。

それに、私の大きな気持ちだって…。



結局、こんなに大好きだったのに、最後の最後まで伝えられなかった。


茅野さんがわざわざ言いに来てくれたのに、
やっぱり私の不器用なところが邪魔をして連絡出来なくて、間に合わなかった…。



思えば思うほど、泣きそうになる。


私ってやっぱりダメだなぁ…
肝心な時くらい、恥ずかしさとか遠慮とか捨てなきゃいけない。

そのくらいのメンタルの強さがないとダメだね…。


自分の服に着替えて、外を歩きながらマンションに向かって帰る。



5月の夜は心地いいくらいの風が吹いて私の髪を揺らす。

そう言えば、10月の友人の結婚式の帰り、肌寒いからってジャケット何も言わずかけてくれたんだっけ…。


いちいち言葉にしない耀の優しさはいつも私の心にじんわり染み込んで、心の深いところをぎゅっとする。



「……耀。


会いたいよ……



ごめんね。
私、全然素直になれなくてごめんね。あの時連絡無視してごめんね。

全部全部謝るから耀に会いたい…。」



我慢してた涙が、どんどん溢れてくる。


耀の笑顔や優しい顔が思い浮かんで、私の頭から消えてくれない。



ズルいよ。


私の心にこんなに居続けて、離したくても離せないんだよ?


本当にズルい…。





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