完璧幼馴染の仮面が崩れるとき
社会人1年目の給料にしてはかなり奮発して予約したレストラン。
そこから見える東京の最高級の夜景は、キスしたあの日の景色とどこか重なって見えるようだった。
あの日みたいな失敗は絶対しない。
「美味しい」そう俺の前で笑顔で食べる茉莉花を見ながらそう決心した。
最高の料理と最高のワイン。そして、最高の女性。
俺はとてつもなく幸せだった。
デザートまで頂いたあと、「茉莉花」と呼ぶと、初めて飲むお酒に酔って頬を赤くした茉莉花が俺を見つめる
「誕生日おめでとう」
そう言ってプレゼントを渡すと、感動したように目をキラキラさせる茉莉花。
リボンを解いて時計を見た瞬間、めいっぱいの笑顔で「ありがとう」といい、その場で嬉しそうに腕につけてくれた。
そう。この笑顔が見たかった。
ずっと、お互い余裕ぶってばっかで、素直な感情が見えない。
今日でそんな関係は卒業だ。
少しして、俺は意を決して切り出した
「茉莉花、俺、お前に言いたいことあんだけど」
「ん?」
そう言って俺を見た瞬間、ふにゃんと机に茉莉花がうつ伏せてしまった
「茉莉花?」そう俺は肩を揺すると聞こえた小さな寝息。
どうやら初めて飲んだわりに、飲みすぎてしまったらしい。
また俺の告白作戦は失敗に終わった。
そこからはもうなんとなく、告白を失敗するのが怖くてチャレンジすることをやめ、今に至るというわけだ。
俺が話終わると、健人がクスクスと笑ってこっちを見ている。
「なんだ、人がせっかく真剣に話してんのに」
「いや、お前って、意外とダセェんだなと思って」
「は?」
「いや、いっつも頭キレてカッコよくて、ダサいとは対極にいるお前がさ、そんなダセェとは思わねーじゃん?」
なんて言ってトコトンバカにしてくる健人。
話すんじゃなかったなんて、後悔してると、健人が俺を向いてこう言った。
「いつか伝わるだろ。そんだけ好きなんだからさ。それにお前、相当イイ男だし、大丈夫だろ
壇さんもいつかお前の良さに気づくよ。
てか、もう気づいてると思うけど?」