完璧幼馴染の仮面が崩れるとき
やばい。こんなに感情的な耀、初めてだ。
「どうしたの?何か嫌なことでもあった?」
私がそう聞くと、耀は呆れた顔をして机に向き直し、再びウィスキーに手を伸ばす。
「お前にはこの気持ち、分かんねぇだろな。
情けないけど、自分は何にもできなかったし、文句も言えねぇ。」
「耀?」
「自分にとって1番大事なもんが、自分の力不足でとられる気持ち、茉莉花には分かんねぇだろ。」
そう言いながらまたウイスキーを口にする。
1番大事なもん...か。
私にとって1番大事なもんってなんだろう。
そんなの考えるまでもなく耀か。
じゃあ、耀の1番は...?
考えてみるけど分からない。
私って、耀の何を知ってる??
こうやって飲むのなんてもう何回目かも分からないぐらい一緒に飲んできたけど、私、耀のことなんにも知らない。
自分ばっかいつも話して、耀はいつもそんな私の話を聞いてくれてた。
私...幼馴染失格かもしれない。
こんな風に耀が弱ってるなんて、よっぽどのことがあったんだ。
今日は耀はひとりでずっとやけ酒してたってことよね。
そう思うと、胸が痛い。
「ねぇ、耀。なんでもっと早く呼んでくれなかったの??
私、呼ばれたらすぐに来たのに。」
「ほんとかよ。
自分はどこぞのお金持ちとディナーしてたくせに。
そんなの、酒の力ないと、今どこでなにしてんのか。こわすぎて呼べるわけねぇだろ」