狂った彼に花束を
そう叫んだ瞬間だった。
さっきまで和やかに笑っていた響夜の顔はどんどん歪んでいった。

「クロ…?婚約者の前でほかの男の名前を呼ぶなんて度胸あるね…」

「婚約者…。」
なにそれ、初めて聞いた。
「俺と花音は婚約してるんだよ…それなのにクロ…ね。仕方ない、もう一度躾なおそうか。」

そう言って響夜はポケットから出した布を私の鼻に当てた。

少しだけ焦げ臭い匂い。
私は彼の微笑む顔を最後に意識を手放した。
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