【BL】田のつくふたり




「田嶋、俺帰るな?」


「え?」



いつの間にか外出用の服に着替えていると思ったら、土田がそう言った。



「どうしたんだよ?」



聞き返した俺に、また聞き返す土田。



「いや、帰るのかと思って」



いつもはこんなふうに帰らないのに。


もっとゆっくりしてるじゃないか。



「帰るよ?」



平然と答える。



「そ、そっか
どうかしたのか?」


「いや、別に」



何か用事があるならしょうがない、そんな期待は、すぐに砕かれる。


動揺を隠しきれず、つなぎ止めようとしているのがバレバレの言い方をしてしまう。


俺、なんでこんな動揺してんだよ。



そんな俺に、いつもよりも冷たく返す土田。



「何も無いならここにいればいいだろ」



今、帰すのは嫌なんだ。これからが無くなってしまいそうで。



「...気まずいし」



ドクン



土田の口からでた言葉が強く胸を突く。



〝気まずい〟なんて、今まで一度も思ったことなかったのに。



「...そうか
じゃあな」



返せる言葉が思い浮かばなくて、ついそんな事を言ってしまう。



「...うん
また会社で」


「おう」



そう言って土田は行ってしまった。


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