すべては君のせいで
僕とサークルと猫と
「夢貴〜お前サークル決めた?」
授業終わり、背後から話しかけてきたのは智さとしだった。
智とは高校からの友達で、、、いや高校では隣のクラスの嫌いな部類のやつだった。まさかこいつと同じ大学で同じ学科になるとは。
「まだだよ。智は?」
「これから色々見に行こうかと思ってるんだよね。お前も行く?」
なんでお前なんかと。とは思いつつ一人でサークルを回るのも億劫だ悟り、笑顔で行こうと返事を返す。
「とりあえず飲みサーで有名なバドミントンみにいこうぜ!」
「飲みサー?そんなとこ入るつもりないよ僕」
「いいからいくぞ」
各部室の前にはおそらく新一年生がたくさんいて、ドアの小窓から中の様子をコソコソとのぞいている。
例にならい僕と智もバドミントンサークルのドア前で中に入るタイミングを伺っていた。
「なんだお前ら!新入生か!?入れ入れ!」
まさかの背後から先輩に声をかけられ部屋に押し込まれた。
こういう時なぜ人間は少し嫌な気持ちになってしまうのか。
中には小汚いソファが三つもあり、そこに男が2人、女が1人、それぞれくつろぐように腰掛けていた。
大学の先輩。どんな怖い人なのだろう。
そんなものを覆すほどの声量で
「いらっしゃーーーい!!!!」
この女酔ってるのか。
僕と智は三つあるうちの真ん中にあったソファに腰をかけ、先輩たちにはさまれた。
「とりあえず俺は石川だ!石川先輩とよべぇ!」
さっき僕たちを押し込んだ先輩は石川先輩というらしい。
絶対この人面白い。
僕たちが自己紹介をしたのち、簡単にサークルの内容と会費等説明を受けた。
「飲みサーって本当ですか??」
よく聞いてくれた智。僕もまさに今聞こうとしてたところだ。
たしかにこの先輩たちは明るくて人当たりもよくて楽しそうだけど、僕が思ってる飲みサーの下品感は無い。
「あぁ、昔はそう言われてたけど去年の会長がすごくちゃんとしてて今は全然そんなことないんだよ。やっぱりそんな噂まだ残ってるのか。」
渡辺と名乗っていた男の先輩が答えてくれた。
あんたが一番チャラそうだ。
「大丈夫かな。電話番号もメルアドも教えてきちゃったけど」
「大丈夫だろ。あの人たちいい人そうだし。それにバドミントンなら初心者の俺らでもできるって言ってたじゃん」
「そうだけどさ〜。」
「まぁ明日のサークルの見学行ってから決めればいいだろ?」
とりあえず僕たちは入会を前向きに検討するということで、
サークルの日時とかの連絡をもらうために連絡先を渡してきた。
智の家は大学のすぐ近くにあって、単身赴任中のサラリーマンとかが住むようなマンションで一人暮らしをしている。
智の実家は自営で流通業をしているからわりとお金持ちなのだ。
僕は今日も電車に乗って帰路につく。
家に着くまで約一時間。家まで徒歩8分の智が羨ましい。
閑静な住宅街を歩いて行き、交番前の上り坂の頂上に僕の家がある。
オンボロアパートの角部屋。ではなく車庫付き三階建ての一軒家。
僕の身長の倍はある玄関のドアをあけると足元に暖かい毛玉がすりよってきた。
「にゃー」
「ただいま。にゃーにゃ」
この家は僕の叔父の別荘である。
僕の大学進学と同じタイミングで叔父の子供(つまるところ僕の従兄弟)がアメリカの小学校に通うことになったので叔父家族がこの家から出て行ったのだ。
しかし可哀想なことに、叔父家族に飼われていた猫は置いてけぼりにせざるを得なかった。
そこで僕がこの家をタダで間借りする代わりにこの猫の面倒をみることになったのだ。
名前はにゃーにゃ。僕のセンスじゃない。
僕の大学生活は猫とともにのんびりと進むのだ。