艶羨
存在
俺の方が彼女よりも遅く産まれただけ。
俺にとってはただそれだけの話。
彼女がテニスコートを出て行くところを見た。
俺はゆっくりと追いかけた。
そしてトイレから出た彼女を抱きしめて
「咲ちゃん、好きだよ。」
そう言って、俺はキスをした。
公園の薄暗い公衆トイレでキスなんてムードも何もないけれど、一瞬でも彼女に触れたかった。
「ここでそういうことはしないように言ったでしょ?」
顔を真っ赤にした彼女は慌ててその場をキョロキョロした。
そんな姿も愛しい。
「大丈夫、誰も見てないから。」
「見られたらアウトだからね。私も、律くんも。」
「はは、気をつけなきゃ。」
「そう思うなら、こういう所でキスしないの!じゃあ、私は先に戻ってるね。」
そう言い残して、彼女を小さな背中はさらに小さくなって、そしていなくなった。
「咲ちゃん…可愛い。」
俺が好きになったのは、近藤咲、24歳の社会人。