黒猫-KURONEKO-《短編》
春日家の長い歴史の中で始めて異国の血を持って生まれた子どもは、
髪や瞳の色や資質は、母の遺伝子を強く受け継いだ。
しかし、中学生の頃から白い肌をより白く、
立派な女らしい身体のラインと豊かすぎる胸を際立たせ、
18を過ぎ黒猫継承の時期を取りざたされる頃になると、
同じ女にすら羨望の眼差しをそそがれる身体になった。
アタシが黒猫になることを躊躇したのも、
黒猫が女だと知られるリスクと、
それ以上に昔からの胸へのコンプレックスがあったからだ。
学校では同級生の男子から胸をネタにからかわれ、
あらゆるところで必ず男性から視線が胸に注がれ、
電車に乗れば痴漢の格好の標的となる。
だから、
普段は胸が目立たない地味な服を選ぶように気をつけているのに、
こんな恥かしい姿を人前に晒すなんて!
アタシは、
実は初恋だって未だなのに。
同級生達は高校生で早々とファーストキスだのセックスだの経験していく中、
奥手のアタシは
「初恋の人と渋谷でデートをする」
と夢見るくらい乙女チック。
だから、
女を利用したり、
男女のかけひきについても充分叩き込まれているものの、
実際に自分から使うほど、
まだふっきれていない。
だからこそ、
初仕事での不愉快なセクハラの洗礼に、
かなり落ち込んだ。