黒猫-KURONEKO-《短編》
エピローグ
一週間後の日曜日の朝、アタシは昔から苦手だった渋谷に向かった。
今まで着る事のなかった、胸元の広く開いた青いミニワンピースに、白いカーディガンを羽織った姿。
いつも通り男性の視線を釘付けにしたが、自然と伸びた背中はどうどうとした自信を伺わせるのか、痴漢達は近寄ろうとしない。
駅に着くと、ハチ公口に出て大勢の人たちに目を凝らした。
一際目立つ背の高いサングラスをかけた男を見つけると、
アタシは満面の笑みで駆け寄った。
「Jさん」
「やあ、仔猫ちゃん」
男は駆け寄ったアタシを抱きしめ、人目も気にせず軽く唇にキスをした。
まだ本当の名前も、お互いのことは何も知らない商売敵の二人。
仕事の時は、お互いプロフェッショナルとしてライバルへと戻る約束だ。
それでも、こうやって側にいる時だけは、世界で唯一心と身体を許せる大切な人。
だから、側にいる時は少しでもつながっていたい。
私は彼の腕に手を絡めると、ビルの上からまぶしい光が降り注ぐ街を、公園通りに向かって歩き出した。
黒猫の、いえアタシの夢をかなえに。
今まで着る事のなかった、胸元の広く開いた青いミニワンピースに、白いカーディガンを羽織った姿。
いつも通り男性の視線を釘付けにしたが、自然と伸びた背中はどうどうとした自信を伺わせるのか、痴漢達は近寄ろうとしない。
駅に着くと、ハチ公口に出て大勢の人たちに目を凝らした。
一際目立つ背の高いサングラスをかけた男を見つけると、
アタシは満面の笑みで駆け寄った。
「Jさん」
「やあ、仔猫ちゃん」
男は駆け寄ったアタシを抱きしめ、人目も気にせず軽く唇にキスをした。
まだ本当の名前も、お互いのことは何も知らない商売敵の二人。
仕事の時は、お互いプロフェッショナルとしてライバルへと戻る約束だ。
それでも、こうやって側にいる時だけは、世界で唯一心と身体を許せる大切な人。
だから、側にいる時は少しでもつながっていたい。
私は彼の腕に手を絡めると、ビルの上からまぶしい光が降り注ぐ街を、公園通りに向かって歩き出した。
黒猫の、いえアタシの夢をかなえに。