キスしたのは最低野郎でした。
「やっ、やだ! 早く下ろしてぇ!」
我に返った私は足をじたばたさせてもがく。
無理! 私重いもん! そりゃ琉輝君に意外と軽いって言われたときやったって思ったけど重いことには変わりないもん!
「お前危ねぇよ! ちょ、うわ!」
私のせいでバランスを崩した琉輝君が後ろにあったソファーへ転ぶ。私を抱えたままソファーへ転んだ為琉輝君がソファーに座っているところに私が横から乗っかったような体制になった。あーあと声を漏らす琉輝君と不意に目が合う。私はドキッとして目を逸らしてしまった。
あ、やば。
そーっと琉輝君を見ると不満そうに顔を歪めていた。
「なんでこっちに顔向けねーんだよ。ちゃんとその顔見せろよ。今は俺のもんだろ?」
誰があんたのものだよふざけんな。
私は琉輝君に顔を見られないように反対を向いて赤くなった頬を手で抑える。
なんでこんなに熱いの?
「んだよ」
更に機嫌を悪くした琉輝君は私の体に手を回す。
「あっ、ちょっ、やめてよ!」
またじたばたと足を動かし私の小さな手は彼の腕を掴んで自由になろうと力を込めるが願い届かず。
「もういいだろ恥ずかしがるなよ」
「別に恥ずかしがってなんか…!」
琉輝君が私の背中に顔を擦りつける。
「あーいい匂いする」
本当に変態にしか見えない。
物凄く面倒臭い彼に私は呆れていた。はぁーっと大きく溜め息を吐く。
「なんだよ何が不満なんだ?」
「別に不満なんかないけど。本当に何がしたいの?」
「お前が欲しいだけ」
「その言葉、困る」
「ずっと困ってろ」
琉輝君が酷いんだけど。
「私に、何して欲しいの?」
「傍にいて欲しい」
後ろからストレートに言う琉輝君。
さらに真っ赤になった顔などで琉輝君は見れない。ていうか見たくない。私は反対を向いたまま彼の言葉を聞く。
「私じゃなくてもいいんじゃない」
そうだ、琉輝君は顔がいい。故に女子が集う溜まり場になっている。そんな中で琉輝君が私を選ぶのは可愛いからだろう。顔。それだけ。
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