キスしたのは最低野郎でした。
だから私は琉輝君のものになんてなる気は微塵もない。
なったらきっと悲しくなるから。後悔するから。辛いだけだから。だから琉輝君の言葉になんて惑わされない。結局言葉だけで行動になんて表さないから。ただの飾りになるだけだから。他の女の子の虫除けになるだけだから。だから私は琉輝君の言葉は信用しない。
「やだよお前がいい。大好きなお前がいい。ずっと傍に居るからさ、お前も俺の隣にいろよ」
甘い、甘い言葉を幾ら吐いたとしても私の心には響かない。それだけ、無駄。
「やだ」
ここはハッキリ言っておかないといけないと思ったから強くきつく当たる。
「なんでだよ」
「結局私だって遊びなんでしょ? 可愛い女の子が隣に居ればいい。ただそれだけなんでしょ? 別に可愛ければ私じゃなくたっていいんでしょ? そんな男のものになるつもりなんてない」
「なっ!?」
私は反対を向いているので琉輝君の顔なんて見えっこない。彼はさぞかし怒っていることだろう。そんなの構わない。琉輝君が怒ってたって怖くない。
「だから離してよ。琉輝君のものになる気なんて無いから」
私は琉輝君の腕に手を添える。そのまま彼が組んでいる手を離すのを待つ。
「きゃ!」
素直に離してくれるかと思っていたがやはり思うようには事が運ばず琉輝君に抱き上げられたかと思うと彼は自分が座っていた場所に私を下ろし左右を逃げられないように腕で逃げ場を無くしていた。
何この状況。
危ないことは分かる。色んな意味で危ないことはこの状況からして非常に分かる。だけど琉輝君が何を考えているのかはさっぱりだ。
「なんで俺の気持ちまで、全部全部決めちまうんだよ。なんでもっと真剣に考えてくれないんだよ」
さっきまでは合わなかった目がこの体制だとどうしても合ってしまう。私は恥ずかしくて目を逸らす。
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