キスしたのは最低野郎でした。
「お前なぁ…?」
分かる。声のトーンで分かる。琉輝君めっちゃ怒ってる。
「ごめんなさい! 本当にごめん!」
これ謝るの私じゃないだろと内心思ったが決して口には出さない。出したら絶対キレられる。それだけは勘弁してほしい。
目を閉じて顔の前で手を合わせるが効果はあるだろうか。
そーっと目を開くと琉輝君は困った顔をしていた。
「そんなに必死に謝られるとなんだかな」
苦笑する琉輝君。
いや無理。ファーストキス琉輝君とか死んじゃう。
「あはは」
やばい棒読みしちゃった。
琉輝君を見ると当然今にもキレそうでした。拳を握り締めてなんとか怒りを抑えている。
ちょっと待ってキレられたら何されるか分かったもんじゃないんだけど。
最悪の場合襲われかねない。只今須崎家には私と琉輝君しか滞在していない。両親共に夜遅くまで仕事して帰って来るだとか。
「お前そんな口きけるのも今のうちになるかもしれないぞ?」
今の言葉で確信を持って言えるようになった。私襲われる。
ここは自分から攻めていかないともっと最悪な結末を迎えることになりそうな気がした。この嫌な予感は的中するだろう。
「あーもう!」
こうなったらやけくそだ。私はソファーから腰を上げて琉輝君の中に飛び込んだ。
「うわ!? なんだよ!?」
私なら何があってもやらないだろうと思っていたのか必要以上に驚く琉輝君。
「別に? 何も無いよー」
更に強く抱き締める。
「ちょ! おい!?」
びっくりして琉輝君が私を体から剥がした。
顔が真っ赤だった。
「あれ? どうしたの?」
「あのさ、お前そういうキャラじゃ無かったよな? なんでこんなことやってんだよ」
言葉だけだと冷静そうに聞こえるが顔を窺うと数秒前までの余裕は無くなっていた。
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