キスしたのは最低野郎でした。
「了解。頑張るわ」
どこか気合いの入った返事を返す琉輝君。逞しいけど頑張るだけ無駄だと思う。
「俺がお前呼ばわり直してお前落として告白するからそれまで他の男のもんになるんじゃねぇぞ?」
「はいはいいつも通り全部断ればいいんでしょ」
私は学校のアイドルです。可愛いからモテます。天才だからモテます。運動神経抜群だからモテます。男子の理想ですお高いですよ。
「え? お前モテてたっけ?」
失礼な。
私がモテなかったら世界中の女性がモテないってことになりますけど如何でしょうか?
「モテるに決まってるじゃん。常に期末テスト、中間テスト共に全教科九十五点以上の学年トップ。陸上部の大会ではリレー、幅跳び、百メートル走にて毎回優勝。それに加えてこのスタイル。細いでしょ? これでも三十キログラムなんだからね?」
「いやお前軽過ぎだろ」
「ありがとう」
まだまだだと思ってたけど結構完成に近いのかな。
「そっか、確かにな」
納得して頷く。
いやこのレベルでモテなかったら死にますよ私。
「ていう理由で琉輝君は頑張らないと私は手に入りませんよってこと。だからせいぜい頑張りな~」
「ハードだな、でも俺も人気者だから結構可能性あるよな。てか何他人事みたいに言ってんだよ」
「いや思いっ切り他人事なんですけど」
「んな事言ってるとまたさっきみたいなキスするぞ」
「それだけは勘弁!」
大きく後ろに引いた、と思ったがドア様がおられました。おいそこどけよ。
「逃げないってことはして欲しいってことか?」
気持ち悪いほどニヤついてる琉輝君、早くここからお暇した方が良さそうだ。
「ごめんなさい無理ですさようなら」
力づくでドアノブを回して開こうとするが琉輝君がそれを許さない。全体重をドアにかけて阻む。
「もう帰してよ!」
「やーだーしーお前泊まってけよ」
「だから無理だって分からないのか馬鹿」
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