キスしたのは最低野郎でした。
「ていうか何笑いながらさり気なく私の膝に頭乗っけてんのよ! 早くどいて重い!」
「いやお前毒舌にも程があるだろ…」
知らぬ間に私に膝枕をさせている琉輝君は体を起こしこちらを見据える。本当に覚えてないかと問うように。
「…ま、しょうが無いよな。覚えてないもんは覚えてない。俺も忘れちまったもんは思い出せねーもんなぁ」
さっきよりトーンの低い声で諦め切ったように言い、立ち上がる。それに倣って私も立つ。
彼は少し悲しそうな顔をしていた。
そんな顔で、こっち向かないでよ。
またしても罪悪感が込み上げてきた。
「なんかあったっけ、私たち。ほんと、なんだろ」
琉輝君に質問を投げ掛ける。だが琉輝君は答えようとしなかった。ただただ今にも泣き出しそうな顔を私に見せてくるだけだった。
「なんか言ってよ。話しづらい」
「ごめん」
素直に謝られたらどうしようもない。
私たちは顔を見合わせたまま黙り込んでしまった。
「んじゃさ、小6の思い出ってなんかある?」
沈黙を切って出たのは琉輝君だった。
え?そんなこと覚えてる… に…。
小学生の記憶を呼び起こそうとしたら何故だか電流が走ったようにズキっと頭が痛くなった。
「ッ!?」
痛みが強かった為その場にしゃがみ込んで頭を抱える。
やだ。なにこれ。痛い!
思い出せなかった。小学生のとき何してたか、誰と同じクラスになったか、どんな行事があって協力し合ったのか。
…私を見下ろす琉輝君がやっぱりなと言った気がした。
「大丈夫か?無理しなくていいんだぞ?」
琉輝君が優しい言葉をかけてくれる。その言葉に甘えて思考回路を停止させる。すると頭痛はすぐに引いた。琉輝君が立っているので私も立とうと足に力を入れる。しかし体が思うように動かずよろけてしまった。
「!? 危ねぇぞ!?」
転びそうになった私の体を琉輝君が支えてくれた。私は彼にしがみつき必死に立とうとする。
「そんな無理しなくても大丈夫だから少し横になれよ」
彼はゆっくりと地面へ座り、私を横にさせる。
「ごめん… なんか小学生の頃の事考えたら急に頭痛くなっちゃって…」
「大丈夫だからゆっくりしろって。体怠いだろ?治るまで隣居てやるからさ」
そう言ってそっと頭を撫でる琉輝君。気持ちいい。
今にも眠りに落ちてしまいそうなくらいに優しかった。
あれ、この感じ何処かで…。
知っているような気がする。この温もりを。温かさを。
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