キスしたのは最低野郎でした。
でも思い出せない。思い出そうとすると再び頭痛が私を襲う。
「うっ!」
顔を顰めて蹲る。
やだ、怖い… なに?私何かした?というか凄い大事なことを忘れているような。
でも今考えると頭痛しか起きないので考えるのをやめる。横に目をやると心配そうに琉輝君が私を見ていた。
「本当に大丈夫かよ、めっちゃ心配なんだけど」
まあ確かに目の前で頭抱えられたり蹲られたりしたら心配するよね。
「ごめん、もう大丈夫。ありがと」
彼の手に自分の手を重ねてからすっと立つ。そして公園の何処かに放り投げてあった鞄を見つけて手に取る。
「…そっか、なら良かった」
私の健康に安堵したのか琉輝君は胸を撫で下ろす。
「もう小学生の頃のことは考えるな。絶対頭痛になるから、いいな?」
? どうしてそんな事言い切れるの?
そんな疑問を抱いた。だって今日初対面だよ? 多分。
「分かった」
取り敢えず彼の言葉に首肯する。嘘じゃないと思ったから。
「結局何がしたかったのか分かんない~ 琉輝君不思議」
元と言えば頭痛になる事を知ってたくせに小学生の頃を思い出させようとした琉輝君が悪いんじゃん。
我ながら馬鹿だった。
「まあまあ、そう言うなって」
琉輝君にに言われたくないんだけど。
「んー、頭痛も怠さも引いたし帰ろっかな。そろそろお母さんとか心配してそうだし」
公園の真ん中にある丸い時計を見るともう8時を指していた。私が公園に入ったのは7時くらいだった筈だ。もう1時間もここに居るということになる。
「えっ!? 帰んの!?」
何故だか琉輝君にビックリされた。そりゃそうでしょもう遅いし。
「うん帰るよ今日はありがとねばいばーい」
私は琉輝君に手を振りながら帰路を辿ろうとした。が、
「待って!」
彼は私の手を素早く取った。
「なに?もう私お腹空いた」
今思っていた事を淡々と述べた。私は少し嫌な顔をしていたと思う。
「…俺んち来ねぇ?」
いや行きませんけど大丈夫ですか。
流石に本音をそのまま言うには言葉が強かったので傷付けないようにと考えながら言葉を返す。
「ごめんもう門限過ぎそうだから…」
嘘です。門限なんてありません。ただ私がお腹空いただけ。
< 5 / 39 >

この作品をシェア

pagetop