キスしたのは最低野郎でした。
「お前んち門限なんてあんの?嘘くせー」
なんかバレたんですけどエスパーですか。
「ま、取り敢えず俺んちで飯食ってけよ。歓迎するぜ」
嬉しくないです。
「大丈夫だから! うん! また今度にしよ!」
まあ今度だとしても行く気は無いけど。
「えぇ~今度とか言って逃げられそうだよなぁ」
なんで全部バレるのマジで怖い。
「大丈夫だから離して!」
上下左右に手を振るが男子の力に勝てるわけない。諦めて私は腕を掴まれたまま溜め息をつく。
「なんでそんなに私と居たいの」
ちょっとした訊きたかっただけだった。けれど彼は真剣に返してくれた。
「好きだから」
そんな一言を。
「…へ?」
「いやだから好きだから。何回も言わせんなって恥ずかしい」
そう言うな否や下を向く琉輝君。恥ずかしいんだね。
私も顔が真っ赤になっていた。触らなくても感覚で分かる。顔が熱い。
「で、来てくれんの俺んち」
またさっきの質問が飛んできた。流石に好きだとか言われた後だと戸惑う。それに琉輝君の勿論来るよなとでもいうような顔ときた。
うぅ… これは行くしかないの?
なんとか逃れられないかと思考を巡らすがやはり無さそうだった。仕方無い、のかな?
そんな私を琉輝君は後ろから抱き締めた。私が悩んでいるという事実すら吹き飛ばしやがった。
「そんなに駄目な理由があるのか?」
きゅっと私を逃がさないようにしながら彼は問う。
あーもう!
「行くから離して! 恥ずかしいからぁ!」
取り敢えずこの場から一刻も早く抜け出したかったので大声で叫ぶ。
「ちょ!? お前近所の人に変な誤解されるからやめろよ!」
私の声にびっくりしてあたふたする琉輝君に思わず笑ってしまった。
「あ! お前何笑ってんだ! ほらさっさと俺んち帰るぞ! あ~なんか、こっちまで笑えてきた」
そう言って口元を押さえ苦笑する。やっぱり不思議。
そしてまた手を差し伸べる。
「ほら、行くぞ」
と、笑いかけながら。

.+*:゚+。.☆

琉輝君の家は自宅への道の真反対なのかと思っていたがどうも違うらしい。私と手を繋いで歩く彼の足は私の家にも繋がる道を通る。私が疲れない程度にゆっくり歩を進める。ここら辺は何故かスナックやらホテルやらが多く、夜は沢山の人で賑わう。その中をはぐれないようにしっかりと琉輝君が手を握ったのでドキドキしっぱなしだった。途中彼は「ここのホテル一緒に泊まらねぇか?」とかワケのわからないことを訊いてきたので丁重にお断りしてやった。誰が行くか馬鹿。
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