先生、ボクを飼ってよ


「繭は自分の生徒のことを一番に考えるようになった。教師なんだ、当然だ。でもさ、俺はそれに嫉妬した」



言葉が出ない。


なんて言えばいいのか、わからない。



「俺、もっと早くこうするべきだったと思うんだ」


「優心……?」


「……俺と、別れてください」



頭が真っ白になった。



泣いてすがることが出来ないってことは、優心にそれほど心が向いてなかったことを証明しているような気になった。



でも、無理して涙を流すのは、どう考えてもありえなかった。



こういうとき、なにを言うのが正解?



どう対応すればいい?



「困らせたか。無理もないな。繭は唐突に言われたわけだし。でも、月日が経っても、俺の考えは変わらないと思う」



逃げ出したい。


否定したい。



どうにかしたいのに、体は動かないし、言葉が出ない。
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