先生、ボクを飼ってよ
瑞貴side
まだ暑さが残っている、九月中旬。
全てが、元に戻った。
この五ヶ月弱の間の出来事を、先生も風香ちゃんも修くんも、なかったことにしている。
これでよかった。
なんて、思えない。
やっぱり、なかったことにはしたくない。
自分の気持ちに、嘘をつきたくない。
でも、先生は違う。
これが迷惑なんだ。
だから、なかったことにするしかない。
ボクはそう自分に言い聞かせ、帰宅準備を終えた。
そして校舎を出たとき。
「この音……」
忘れもしない、先生のピアノの音だった。
それを聞いた瞬間、ボクは音楽室に走った。