先生、ボクを飼ってよ
「来ると思ったわ」
すると、微かに微笑む彼女。
ボクは思わず見とれてしまった。
「昨日は外で眠っていたし、今日は佐伯さんたちとこの話していたわよね」
そう言いながら、彼女は立ち上がる。
普段聞かない、どこか楽しそうな声。
ボクはどんどん緊張して、体が動かない。
それを見た彼女はまた微笑み、ボクに近付く。
「あの元気な椎名君はどこに行ったの?」
彼女は妖艶な雰囲気を纏う。
きっと無自覚。
だからこそ、タチが悪い。
無駄に動悸が激しい。
「あの……これ……」
そんな彼女の前に、手に持っていた紙袋を差し出す。
中には昨日借りたセーターが入っている。
「昨日のセーターね。ありがとう」
どうして。
どうして、こんなに美しく見とれてしまうような笑顔なのに、無表情を貫くんですか。