先生、ボクを飼ってよ
先に音楽室を出た先生が、ドアを開けて待っていてくれた。
「なんとか」
そうは言ったものの、またあくび。
説得力のなさよ。
廊下に出ると、小さな笑い声が聞こえてきた。
先生が鍵を閉めながら笑っている。
「……笑わないでくださいよ。先生のピアノのせいで眠くなったんですからね」
「私のせいなの?」
純粋に不思議そうな目で聞いてくる先生。
「その聞き方、ずるいと思うんですけど」
「そう?」
今度は首を傾げた。
この人、本当に森野先生なのかな。
普段の先生からは全く想像出来ない姿だ。
なにか言い返そうと思ったら、先生は一歩踏み出した。
もう、二人の時間は終わりなんだ……
「先生、明日もピアノ弾く?」
「気分次第ね。それじゃ、また明日」
先生の目的地は職員室。
だから、先生はそれだけ言って、ボクから離れていった。
明日も、先生のピアノが聴けたらいいなあ……