先生、ボクを飼ってよ


先に音楽室を出た先生が、ドアを開けて待っていてくれた。



「なんとか」



そうは言ったものの、またあくび。


説得力のなさよ。



廊下に出ると、小さな笑い声が聞こえてきた。


先生が鍵を閉めながら笑っている。



「……笑わないでくださいよ。先生のピアノのせいで眠くなったんですからね」


「私のせいなの?」



純粋に不思議そうな目で聞いてくる先生。



「その聞き方、ずるいと思うんですけど」


「そう?」



今度は首を傾げた。



この人、本当に森野先生なのかな。


普段の先生からは全く想像出来ない姿だ。



なにか言い返そうと思ったら、先生は一歩踏み出した。



もう、二人の時間は終わりなんだ……



「先生、明日もピアノ弾く?」


「気分次第ね。それじゃ、また明日」



先生の目的地は職員室。


だから、先生はそれだけ言って、ボクから離れていった。



明日も、先生のピアノが聴けたらいいなあ……

< 20 / 116 >

この作品をシェア

pagetop